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2011.11.25 Friday ... - / -
#愛すべき温度
「動物も怖いし魚も怖い、まったく君って人は!動物園にも水族館にも行けない、どうしろって言うんだよ」

頭を抱えてみせると彼女は困ったように俯いた。

「だって動物も魚も、いつかは死んでしまうでしょう。あったはずの温もりが失われていくのをただ見ているだけ、なんて恐怖でしかないわ」
ネズミやアヒルの着ぐるみなら別だけれど、と上目使いに僕をそっと見上げる。

「私は別に特別な場所に行かなくてもいいの。あなたの温もりを確かめていられるなら、そこが小さな公園だろうとあなたの部屋だろうと構わないの。あなたの温度、あなたの鼓動を確かめていられるなら」

そう言う頃には彼女は、僕を真っ直ぐに見つめていた。
彼女は今まで僕が出逢ってきた誰よりいのちに対して敏感で繊細で臆病で、また優しく美しい魂を持った人だ。
ニュースで殺人や虐待の報道がされているのを見ると即刻テレビの電源を切る。
人が死ぬような映画は絶対に観ない。
思春期にご両親を相次いで喪った影響が大きいのだろう、彼女は命のぬくもりを愛し、それが冷えていくことを何よりも恐れている。

「私より一秒でも長く生きて。あなたのぬくもりが最期まで私を包んでくれるように」

そう真剣に語りかけてくる彼女を、面倒臭いやつだと突き放して、抱きしめないだなんてことができるだろうか?少なくとも、僕にはできない。

「わかった。今度の週末も僕の部屋でだらだら過ごそう。お互いの温度を確かめていよう、ずっとずっと」

そう耳元で囁くとやっと、彼女は身体中に込めていた力を抜いて、僕にすべてを託してきた。
薄い肩、華奢な腰、僕より少し速い鼓動、僕より少し低い体温。
ああ、彼女は、生きてる。

「あったかいね、生きてるんだね」

そう、僕らは愛し愛されて、生きてきたし、生きていくのだ。





thanks!:夜風にまたがるニルバーナ
2008.11.25 Tuesday ... comments(0) / trackbacks(0)
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2011.11.25 Friday ... - / -
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